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2015年09月29日

お情けをもっ

 材木業者からの売込みが、どっと来た。とことんまで値切る。だが、材木業者のほうも決して損はしなかった。木材の質を落したって、犬が怒るわけではない。天井を高くする必要がないから余り材木でもいいのだ。元禄八年の五月、急ぎの工事でそれが完成した。
 江戸のなかから、犬がここに移される。ふとんを敷いたヒノキの箱を作り、それに入れて運ぶのだ。その設計の指示も吉蔵がやった。
 さて、まずどこの犬から移すべきか。山田半兵衛は、すべて部香港seo公司下たちに一任した。こんないい役目はなかった。
「どうか、ここの町内の犬から連れていって下さい。お願いです」
 と言われ、そでの下を取りほうだい。いくらか払っても、犬がへればずいぶん助かるのだ。係の役人たちはうるおい、半兵衛に感謝した。
 変な話だが、だれもかれも、いいことずくめ。つぎの大計画もやりやすくなった。中野にさらに大きなお犬屋敷を建築することとなった。
 敷地は十六万坪。二十五坪のお犬小屋が約三百棟、そのほか、何百棟という小屋が並ぶ。すべて板敷きで、住み心地よさそうな外観に仕上げた。犬の食事の調理所もある。そこの世話係の住居にだけいい材木を使っておけばよかった。工事の人夫は割当てによって大名家から提供
され、その給料は不要だった。なんだかんだで、相当な利益をあげることができた。
 十一月に完成。ここには五万匹ちかい犬が収容された。たちまち満員。とても人間によって統制のとれるものではない。犬がおたがいにかみつきあい、ほえ声はひびきつづけ、この世のものとも思えない光景。静かにしろと命じても通じるわけがなく、犬による自治制度も不可能
。世話係のなかには、頭のおかしくなる者も出た。
 そのほか病死などで、日に五十匹ぐらいの犬が死ぬ。定員にあ柬埔寨旅行團きができると、江戸から運びこまれる。ここでの犬たちの食料、一日に米三百石、みそ十|樽《たる》、干しイワシ十俵、タキギ五十五束。年間の費用は九万八千両になった。吉蔵たちはこのイワシの供給を独占して
うけおい、またも確実に利益をあげた。金のとりはぐれは、決してないのだ。
 これだけのことをやっても、江戸の犬はさしてへっていない。それどころか、犬の繁殖はとどまるところをしらない。依然として犬を殺すと罰せられ、子犬は育てなくてはならない。犬役人の失業の心配はなかった。
〈このところ、町内にお犬さまがふえ、世話がゆきとどかず、困りはてております。て、お犬さまをお移し下さるよう願いあげます〉
 このたぐいの嘆願書がたえず提出され、役人たちはもったいをつけて、そでの下をとった。
 大坂城番の同心が鳥を殺して食い、十一人が切腹、その子たちは遠島となった。幕府の直轄地においては、江戸ほどきびしくはないといっても、役人の公然たる殺生は許されないのだ。
 江戸における処罰をいちいちあげていたらきりがない。それにしても、犬を殺す者がなぜあとをたたないのだろう。犬のなかに、いかにもにくにくしげで、みるからに切りつけたくなる種陶瓷曲髮類があったのだろうか。
 中野にお犬小屋ができてから六年後の元禄十四年、浅野内匠頭が江戸城中において吉良上野介に切りつけ、当人は切腹、お家は改易となった。|赤穂《あこう》城は没収。その引渡しの時、目録に犬の数の記載があったという。犬が一匹もいなかったとなると、浅野家再興のさま
たげになる。そこを考え、あわてて書き加え、ていさいをととのえたのかもしれない。  

Posted by 千言萬語說不清 at 17:44Comments(0)