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2015年10月06日

その帰途

たという。その家臣の家は形式の上で断絶となったが、むすこは新規召し抱えとして藩士となった。丸くおさまったといえる。
 宗之助は、父の発見した薬草のききめをみなおした。頭痛と発熱をひきおこす作用があるらしい。毒も使いようで役に立つぞ。
 そのうち、またもそれを使う機会にめぐまれた。
 宗之助が城下を散歩していると、みすぼらしい少年Pretty Renew 黑店武士にであった。空腹らしい。めしを食わせて事情を聞くと、父のかたきを追ってここまで来たという。
「それで、かたきをみつけたのか」
「はい。このさきの旅館にとまっています。しかし、相手は強い武士。わたしには討てそうになく、困っているのです」
「なるほど。しかし、安心しなさい。わたしは当藩の医師。かたきを討てる薬をあげよう。これを飲んで三日目にやりなさい。かならず勝てる」
 そして、にがいだけの、ただの薬を少年武士に飲ませた。一方、かたきのとまっている旅館に行き、女中にたのんで、例の毒草を飲ませる。翌日、近くをうろついていると、かたきの武士から声

をかけられる。
「医師とおみうけする。みていただきたい」
 宗之助、あれこれもっともらしく診断し、そっと言う。
「これは、わたしの手におえない。のろいです。あなたに殺された人身體護理の霊がとりついている。頭が痛く、熱っぽいでしょう。だんだんひどくなり、しまいには狂い死にをする。なにか原因に心当り

は……」
「ないこともない。同僚の武士をやみ討ちにし、逃げまわっているのだ。それかもしれぬ。で、なおらぬというのか」
「むずかしいでしょうな。これは、あの世に行ってもなおらず、成仏できません。霊魂ののろいが消えれば、あなたの死後の魂は救われるでしょうが」
 おどかして帰ると、ころあいをみはからって、少年武士が乗りこむ。
「やい、父のかたき、尋常に勝負しろ」
 かたきのほう、こうなると、ここで討たれて、せめて死後の成仏だけはしたいという気になっている。かえり討ちにしてもいいが、死後まで狂い死にがつづいてはかなわん。勝敗はあきらか。
 少年の感激といったらなかった。宗之助にお礼を言って、故郷へと帰っていった。、ほうぼうでこの話をしたにちがいない。
 何カ月かすると、宗之助の家に武士の訪問客があり、こんなことをたのむ。
「うわさによると、こちらに秘伝のかたきうち薬があるとか。大変なききめだそうで。ぜひ、おゆずりいただきたい。かたきを討たぬと帰参できない身の上なのです」
「ははあ、あのにがい薬のことですな。よろしい、おゆずりしましょう。かたき港股通成交にめぐりあった時に、お飲み下さい。それから三日後に、たちあうのです。代金はけっこうですよ。みごと本懐をと

げられたあとで、おこころざしだけお送り下さい」
「かたじけない」
 相手は大喜び。にがいだけの薬だが、あるいは、いくらか気力を高める役に立つかもしれない。立たなかったとしても、あとで文句をつけられる心配はない。
  

Posted by 千言萬語說不清 at 18:51Comments(0)