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2015年10月19日

たが見えなく


 三太はじだんだふんでくやしがった。いかに三太がすばしこくても、自動車には追いつけない。うらめしそうに、走り去る自動車の、うしろすがたを見ていたが、そのときだった。一台の自動車がそばへとまると、
「よう、三太じゃないか、どうしたんだい」
 声をかけられてふりかえった三太は、運転手の顔を見ると、こおどりせんばかり喜んで、
「あ、|吉《よし》|本《もと》さん、ぼくをのっけてください。ぼく、いま、悪者を追っかけているんです」
「悪者……?」
 吉本運転手は目を丸くして、
「悪者って、いったい、ど、どこにいるんだ?」
「むこうへいく自動車です。あの自動車に悪者がのっているんです。吉本さん、ぼくをのっけてあの自動車を追跡してください」
「よし、それじゃ早くのれ」
 三太がのりこむと、すぐに自動車は出発した。
 吉本運転手というのは、三太がくつみがきをしていたじぶん、こころやすくなった青年なのだ。三太はむじゃきで、かわいい少年だから、だれにでも好かれるのだが、とりわけこの吉本運転手とはだいの仲よしだった。
「三太、きみはいったいどこにいたんだ。ぼくはきみのすがなったので、どんなに心配したか知れやしないぜ」
「すみません、ぼく悪者にだまされて……」
 と、手短に、その後のことを語って聞かせると、吉本運転手は目を丸くして、
「銀仮面といえば新聞にも出ていたが、三太はそんな悪者の仲間にされていたのかい?」
「うん、でも、ぼく、なにも知らなかったんです」
「そして、その銀仮面の仲間の者が、あの自動車にのっているというんだね」
「そうです、そうです。だから、吉本さん、あの自動車を見失わないようにしてください」
「よし、だいじょうぶだ」
 こうして二台の自動車は、まるで一本のくさりでつながれたように、東京の町をぬって走っていくのだった。
  

Posted by 千言萬語說不清 at 12:39Comments(0)

2015年10月14日

取れる言葉

 鳴海の力、消魔の力で封印は一時的に消えた。
 それは数分ではあるが、この世界で、この宇宙で自分に匹敵する存在が居なくなった事
を意味する。
 傷を治療するのは止めた。自分が捨香港夜遊てたはずの力を使うのは、最低限にしたい。
 ちらりと猟犬に目を向けた。慌てて距離を開けるのが見えた。
 確かに力の差が有りすぎる。このまま、消し去るのも可愛そうな気がした。

「犬コロ、良く聞け。私の右手はもう使えない」
 手首の骨は砕けているし、指も動かない。
「足もダメ。歩くのがやっと」
 右足は靭帯が損傷している。左もほとんど感覚がない。神経が損傷してるのだろう。
「でも、左手が残っている」

 無傷の左手で拳を作り、ぐっと突き出した。
 猟犬が牙を剥く。

「つまり、お前に抗衰老顧問ち目はない」


「アンタが降参するっていうんなら、苦痛は最小限で封印してあげる。
 でも抵抗するのなら、容赦はしない。頭を握り潰して、首を引きちぎってやる」

 判断に迷った。
 魔女はかなりの傷を負っている。
 立っているのがやっと、反撃する力も殆どないだろう。
 なのに、この降伏勧告とも。
 真意を測りかねる。
 まだ余力があるのか。それともブラフか。

 視線をくまなく走らせ、状況を分析する。
 体型はわずかに大きくなった。しかし、魔力の匂いはない。
 なるほど。こうして時間を稼ぎ回復を図る手か。
 そんな子供騙しが通用染髮するとでも思ったか。
 魔女と言っても所詮は人間。愚鈍で臆病で脆弱な生き物だ。
 先ほどは予想外の反撃を受けたが、それももう覚えた。
 爪で薙ぎ払い。牙で止めを刺す。  

Posted by 千言萬語說不清 at 18:11Comments(0)

2015年10月06日

その帰途

たという。その家臣の家は形式の上で断絶となったが、むすこは新規召し抱えとして藩士となった。丸くおさまったといえる。
 宗之助は、父の発見した薬草のききめをみなおした。頭痛と発熱をひきおこす作用があるらしい。毒も使いようで役に立つぞ。
 そのうち、またもそれを使う機会にめぐまれた。
 宗之助が城下を散歩していると、みすぼらしい少年Pretty Renew 黑店武士にであった。空腹らしい。めしを食わせて事情を聞くと、父のかたきを追ってここまで来たという。
「それで、かたきをみつけたのか」
「はい。このさきの旅館にとまっています。しかし、相手は強い武士。わたしには討てそうになく、困っているのです」
「なるほど。しかし、安心しなさい。わたしは当藩の医師。かたきを討てる薬をあげよう。これを飲んで三日目にやりなさい。かならず勝てる」
 そして、にがいだけの、ただの薬を少年武士に飲ませた。一方、かたきのとまっている旅館に行き、女中にたのんで、例の毒草を飲ませる。翌日、近くをうろついていると、かたきの武士から声

をかけられる。
「医師とおみうけする。みていただきたい」
 宗之助、あれこれもっともらしく診断し、そっと言う。
「これは、わたしの手におえない。のろいです。あなたに殺された人身體護理の霊がとりついている。頭が痛く、熱っぽいでしょう。だんだんひどくなり、しまいには狂い死にをする。なにか原因に心当り

は……」
「ないこともない。同僚の武士をやみ討ちにし、逃げまわっているのだ。それかもしれぬ。で、なおらぬというのか」
「むずかしいでしょうな。これは、あの世に行ってもなおらず、成仏できません。霊魂ののろいが消えれば、あなたの死後の魂は救われるでしょうが」
 おどかして帰ると、ころあいをみはからって、少年武士が乗りこむ。
「やい、父のかたき、尋常に勝負しろ」
 かたきのほう、こうなると、ここで討たれて、せめて死後の成仏だけはしたいという気になっている。かえり討ちにしてもいいが、死後まで狂い死にがつづいてはかなわん。勝敗はあきらか。
 少年の感激といったらなかった。宗之助にお礼を言って、故郷へと帰っていった。、ほうぼうでこの話をしたにちがいない。
 何カ月かすると、宗之助の家に武士の訪問客があり、こんなことをたのむ。
「うわさによると、こちらに秘伝のかたきうち薬があるとか。大変なききめだそうで。ぜひ、おゆずりいただきたい。かたきを討たぬと帰参できない身の上なのです」
「ははあ、あのにがい薬のことですな。よろしい、おゆずりしましょう。かたき港股通成交にめぐりあった時に、お飲み下さい。それから三日後に、たちあうのです。代金はけっこうですよ。みごと本懐をと

げられたあとで、おこころざしだけお送り下さい」
「かたじけない」
 相手は大喜び。にがいだけの薬だが、あるいは、いくらか気力を高める役に立つかもしれない。立たなかったとしても、あとで文句をつけられる心配はない。
  

Posted by 千言萬語說不清 at 18:51Comments(0)