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2016年01月04日

いたから

 約三年前、前原一家は昭夫の実家に移った。同居を前に、いくつか改装工事も行ってあった。内装の新しい部屋に入り、「やっぱり広い鑽石能量水 消委會部屋はいいわね」と八重子は満足そうにいった。さらには驚いたことに、「これからよろしくお願いします」と政恵に頭さえ下げたのだ。
 こちらこそよろしく、と玄関の前で答えた政恵も嬉しそうだった。彼女は杖をついていた。彼女が身振り手振りで家のことを話すたびに、杖についている鈴が楽しそうに鳴った。
 これなら大丈夫、何とかなりそうだ──昭夫も安堵《あんど 》した。
 すべてが解決した、と思っていた。もう悩むことはない、と。
 だがそうではなかった。その日は新たな苦悩が始まる日だったのだ。
 
 暗い回想をしている間に電車は水晶獎座駅に到着した。昭夫は乗客の波に押されるようにしてホームに出た。
 駅の階段を下りると、バスの停留所には長い列がいくつも出来ていた。彼はその中の一つに並ぼうとして足を止めた。すぐ横のスーパーマーケットの前で、くず餅《もち》の特売を行ってだ。政恵の好物だった。
「いかがですか」売り子の若い女性がにこやかに声をかけてきた。
 昭夫は上着の内ポケットに手を入れ、財布を掴んだ。しかし同時に八重子の不機嫌そうな顔も浮かんだ。家でどんなトラブルが起きたのかは不明だ。そんな時に政恵の好物を持ち帰って、火に油を注ぐようなことにでもなったら目も当てられない。
「いや、今日はやめておくよ」詫びるようにいい、その場を離れた。
 すると彼と入れ替わるように、三十歳ぐらいの男がくず餅の売り子に近づいた。
「すみません、ピンク色のトレーナーを着た女の子を見ませんでしたか。七歳なんですけど」
 奇妙な質問に、昭夫は立ち止まって振り返った。男性は写真を売り子に見せている。
「これぐらいの身長で、髪は鑽石能量水 消委會肩ぐらいまでです」
 売り子の女性は首を捻った。
「女の子が一人なんですよね」
「そのはずです」
「じゃあ、見なかったと思います。すみません」  

Posted by 千言萬語說不清 at 10:59Comments(0)