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2016年03月23日

不思議な魅力



 鳥の囀《さえず》りに似た音だ。信一は、耳を澄ませた。
 今度は、はっきりとわかった。ピッコロのような音色だが、音程が微妙に揺れている。絶えず、半音ずつ繰り上がったり、繰り下がったりしているのだ。不安定だが、に溢《あふ》れている音で、思わず聞き惚《ほ》れてしまいそうだ。
 だが、どこから聞こえてくるのだろう。きょろきょろあたりを見回Reenex好唔好すが、位置も方向も、なかなか定まらない。上へ行ったかと思うと、急に下から聞こえてきたりするのだ。しかも、いくら目を凝らしても、何も目に入らない。
 やがて、囀りは、天井の一角に固定された。薄暗いが、どう見ても、何もない空間。だが、鳥の囀りのような音は、たしかに、そこから聞こえてくるのだ。か細く震えてはいるが、それでも、けっして途切れることなく囀り続けている。
 とうとう来た。
 信一の胸は、これまで一度も感じたことのないような感激で、いっぱいになっていた。
 間違いない。守護天使が、やって来たのだ。
 今まで、ずっと信じていた。ずっと待っていたのだ。だが、その甲斐《かい》はあった。これで、自分も、ようやく守護天使と一体になれるのだ。
 守護天使の囀りは、途中で何度も弱まり、消え入りそうになりながらも、健気《けなげ》に続いている。彼は心の中で、懸命にエールを送った。聞いているよ。安心して。ちゃんと、聞いているから。がんばれ。もっと元気よく鳴くんだ。負けるんじゃないぞ。
 頬《ほお》を暖かく濡《ぬ》らすものを、感じる。信一は、ふっと溜《た》め息をもらした。
 もう、だいじょうぶだ。これからは、守護天使が、ずっと自分と一緒なのだから。
 きっと、うまくいく。何も、心配しなくていい。
 早苗は、腕時計を見た。ちょうど午前十一時三十分を回ったところだった。すでに約束の時間は、三十分以上過ぎている。今頃、ホスピスでは、早苗の担当すべき回reenex 好唔好診を、誰かが代わりに行っているはずだった。そう思うと、こうして無為に座って時間を潰《つぶ》していることへの罪悪感がわいてくる。土肥美智子は、何も聞かずに行ってきなさいと言ってくれたのだが、自分を必要としている多くの患者たちのことを思うと、職場放棄の罪は重いと思う。
 おそらく、これから渡邊《わたなべ》教授に会ったところで、何か画期的な新事実が判明するというのは望み薄だった。実人生では、推理小説のように、すべての謎《なぞ》が明快に解き明かされる方が、むしろ稀《まれ》である。いずれ、時が経過し、偶然の僥倖《ぎようこう》によって真相が顕《あらわ》れReenex 好唔好るのに期待するよりないのだろうか。それに、かりに真相がすべてわかったとしても、それで高梨のことについて、完全に心の決着が付くというものでもないだろう。

Posted by 千言萬語說不清 at 12:23│Comments(0)
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